体重管理は、見た目のためだけではありません
「最近、お腹が出てきた」「健康診断で体重を減らすように言われた」「痩せた方がいいのは分かっているけれど、なかなか続かない」
こうした悩みをお持ちの方は少なくありません。
肥満というと、どうしても見た目の問題として捉えられがちです。しかし、医学的には、肥満は糖尿病、高血圧、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群など、さまざまな病気と深く関係しています。
つまり、体重を管理することは、将来の病気を予防し、健康に過ごせる時間を延ばすための大切な取り組みなのです。
今回は、肥満症治療の健康上のメリットと、少し違った視点から見た「費用対効果」について考えてみたいと思います。
体重が5%減るだけでも、体は変わる
「10kgも20kgも痩せないと意味がないのでは?」
そんなことはありません。
実は、現在の体重から5%程度減量するだけでも、血糖値や血圧、中性脂肪などの改善が期待できます。
例えば、体重80kgの方であれば、5%はわずか4kgです。
もちろん個人差はありますが、この程度の減量でも、体の中では良い変化が起こり始める可能性があります。
さらに、適切な減量によって、次のようなメリットが期待できます。
- 血糖値の改善、2型糖尿病の発症リスクの低下
- 血圧や脂質異常の改善
- 膝や腰への負担の軽減
- 睡眠時無呼吸症候群の改善
- 脂肪肝の改善
- 日常生活での動きやすさや生活の質の向上
重要なのは、単に体重計の数字を減らすことではありません。
体重を減らすことで、体の中で何が改善するのか。
ここに、肥満症治療の本当の意味があります。
肥満症の治療は、将来への「医療投資」
最近では、ウゴービやゼップバウンドといった、肥満症の治療に使用される注射薬が登場しています。
これらの薬は高い減量効果が期待できる一方で、自由診療の場合、費用が高額になることが課題です。
「そこまでお金をかけて痩せる必要があるのだろうか?」
そう考えるのは自然なことだと思います。
ここで少し視点を変えてみましょう。
例えば、将来、糖尿病や高血圧、心血管疾患などを発症すると、長期間にわたる通院や服薬が必要になることがあります。
病気によっては入院や手術が必要になり、仕事や日常生活に影響が出ることもあります。
もちろん、肥満症を治療すれば、こうした病気を必ず防げるわけではありません。また、高額な肥満症治療が将来の医療費を必ず節約できるとも限りません。
しかし、将来の病気のリスクを減らし、元気に生活できる時間を増やすことには、医療費だけでは測れない価値があります。
旅行を楽しむこと、趣味を続けること、家族と元気に過ごすこと。
こうした日常を長く維持することも、健康管理の大切な目的です。
肥満症の治療は、単なるダイエットではなく、将来の自分の健康に対する「投資」と考えることもできるのではないでしょうか。
ただし、誰もが薬を使う必要はありません
ここは非常に大切なポイントです。
体重が多いからといって、すべての方に薬物治療が必要なわけではありません。
まず基本となるのは、食生活の見直し、適度な運動、十分な睡眠など、日々の生活習慣です。
また、BMIが高いことと、医学的に治療が必要な「肥満症」であることは、必ずしも同じではありません。
肥満に関連した健康障害の有無や、内臓脂肪の蓄積などを含めて評価することが重要です。
一方で、食事や運動を頑張っても十分に体重が減らない方、肥満に伴う健康障害がある方では、薬物療法が治療の選択肢になる場合があります。
薬には副作用もあり、治療を中止すると体重が再び増加することもあります。そのため、長期的な体重管理を見据えて治療方針を考える必要があります。
大切なのは、薬を使うかどうかではなく、自分に合った方法で、無理なく健康を維持していくことです。
当院での肥満症治療について
むらかみ内科クリニックでは、糖尿病や循環器疾患の診療に加えて、肥満症の治療にも取り組んでいます。
糖尿病の患者さんには、医学的な適応に応じてマンジャロなどを保険診療で使用しています。
また、肥満症に対しては、ウゴービやゼップバウンドを用いた自由診療にも対応しています。
なお、現在、当院での自由診療による肥満症治療は、当院に継続して通院されている患者さんのみを対象としています。
治療を希望される場合には、肥満の程度、合併症、薬剤の適応、副作用、費用などを確認しながら、適切な治療方法を検討しています。
薬を使用する場合も、食事・運動療法を組み合わせた継続的な健康管理を大切にしています。
最後に ― 10年後の自分のために
私たちは日頃、健康であることを当たり前のように感じています。
しかし、糖尿病や心臓病などの診療をしていると、病気を発症する前から健康管理に取り組むことの大切さを感じます。
肥満症の治療は、決して「痩せればよい」というものではありません。
血糖値や血圧を改善すること、将来の病気のリスクを減らすこと、そして何より、元気に自分らしい生活を続けること。
そのための一つの手段が、適切な体重管理です。
10年後、20年後も元気に過ごすために、今できることは何でしょうか。
まずは毎日の体重を測ってみる。夕食の量を少し見直してみる。いつもより10分長く歩いてみる。
そんな小さな一歩からでも構いません。
今回のコラムが、ご自身の健康について少し考えるきっかけになれば幸いです。
むらかみ内科クリニック糖尿病・循環器・甲状腺内科