「血圧はいつも同じくらいだし、薬もずっと同じ。毎回薬だけもらっていれば大丈夫ですよね?」
高血圧で長く通院されている方から、ときどきこのようなお話を伺います。
たしかに、血圧が安定していて体調にも変化がなければ、「いつもの薬を続けるだけでいいのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、高血圧の診療では、血圧の数字を見ることと同じくらい、その血圧によって体に変化が起きていないかを定期的に確認することが大切です。
高血圧は「症状がない」ことが珍しくありません
高血圧の難しいところは、かなり血圧が高くても自覚症状がない方が少なくないことです。
- 「頭も痛くない」
- 「胸も苦しくない」
- 「普通に生活できている」
だから大丈夫、とは限りません。
高血圧の状態が長く続くと、少しずつ血管に負担がかかり、心臓、脳、腎臓などに影響を及ぼすことがあります。
その変化は、症状が出る前に始まっていることもあります。
「同じ薬を出し続けるだけ」では分からないことがあります
診察室で血圧を測り、いつもの薬を処方する。
これだけを何年も繰り返していると、血圧の数字は分かっても、体の中で起きている変化を見逃してしまう可能性があります。
たとえば、
- 腎臓の機能が低下していないか
- 糖尿病になっていないか
- コレステロールや中性脂肪が高くなっていないか
- 心臓に負担がかかっていないか
- 不整脈が起きていないか
といったことは、診察と血圧測定だけでは十分に分かりません。
そのため、必要に応じて血液検査、尿検査、心電図などを行います。
検査は「薬を出すため」にするのではありません。
今の治療をこのまま続けてよいか確認するためのものでもあるのです。
年齢とともに体の状態は変わります
何年も同じ薬で血圧が安定していること自体は、悪いことではありません。
むしろ、その薬がよく合っている可能性があります。
ただし、5年前と現在では、同じ人でも体の状態は少しずつ変わっています。
腎臓の働きが変化したり、糖尿病や脂質異常症が新たに加わったり、心電図に変化が現れたりすることもあります。
ですから、
「薬が同じだから、診療内容もずっと同じでよい」
とは限りません。
薬を変えないためにも、ときどき確認することが大切なのです。
健診を上手に利用する方法もあります
「病院でいろいろ検査されるのは苦手」という方もいらっしゃいます。
そのような場合には、特定健診などを利用するのも一つの方法です。
血圧だけでなく、血糖や脂質、肝機能、尿検査などを確認でき、自分では気づいていなかった生活習慣病が見つかることもあります。
健診結果をかかりつけ医と一緒に確認し、必要な項目だけ追加で調べるという方法もあります。
「変わっていないこと」を確認するのも診療です
検査をして、
- 「腎臓も大丈夫です」
- 「糖尿病もありません」
- 「心電図にも大きな変化はありません」
と言われたら、「結局何もなかった」と思われるかもしれません。
でも、それは決して無駄な検査ではありません。
今までの治療を安心して続けられることを確認できたという、とても大切な結果です。
高血圧は、多くの場合、何年、何十年と付き合っていく病気です。
だからこそ私たちは、血圧の数字だけではなく、その先にある心臓や血管、腎臓なども含めて診ていきたいと考えています。
「ずっと同じ薬だから大丈夫」ではなく、
「ずっと元気でいるために、ときどき確認する」。
それが、高血圧と上手に付き合っていくための大切なポイントです。